サウンドデザインとは

人間は情報の80%を視覚から得て、残りの20%を聴覚や嗅覚・触覚から得るとされています。
日々の生活の中で、音(生活音や都市の音・自然の音など)は、言語(声)を除いて、目に見えるものほどには強く認識されません。
見ることが出来ない香りや音のデザインは、最近になってようやく認識が高まってきました。あわせて「サウンドデザイン」「サウンドデザイナー」という言葉も目に付くようになりました。映画やゲームなどの映像を最大限に活かす音楽などの音響要素を制作し、そのための音響技術に精通している人たちが活躍していますインテリアや照明などの空間デザインと同じように、「人々が快適で心地よく過ごすことのできる空間を作る」ためのサウンドデザインで、立体音響の制作や技術を意味しています。



人間は情報の80%を視覚から得て、残りの20%を聴覚や嗅覚・触覚から得るとされています。
日々の生活の中で、音(生活音や都市の音・自然の音など)は、言語(声)を除いて、目に見えるものほどには強く認識されません。

音は物理的な現象
音の原理を少し考えてみましょう。
音は物と物がこすれたりぶつかったりして振動することで生まれます。
その振動は空気を震わせながら、ちょうど池におちた小石で波紋が広がるように周囲へ伝わっていきます。
振動は空気の密度や温度によっても伝わり方(速度)が変わりますし、なにしろ空気ですから、途中にある壁や物に当たれば跳ね返されて、それが反響となってこちらへ返ってきたりします。
このように、空間の立体音響を理解するためには音の物理的な原理を知る必要があります。
また、どうして人間は音を聞くことが出来るのか…人間の聴覚を理解することも大切です。
人間が聞き取りやすい音、方向や遠近を聞き分ける仕組みなどを理解すれば、空間の音作りが容易になります。
つまり、音が発出する場所と聞く人の耳の位置関係を考えることが必要です。

 


音の力
音楽は人間の根源的な感情(喜びや悲しみ・怒りや愛)を表現し、歴史を超えて生き残る強い力を持っています。
しかし、自然音や生活音なども、人の感情、情緒に訴えかける大きな力を持っています。
音はとても豊かな世界であり、人々の心にさまざまなイメージを呼び起こす力を持っています。

 


音は時間の表現
建築空間が出来上がると、その空間には時間が流れはじめます。
晴れの日、雨の日、人々が訪れ、互いに出会い、語り合い、食事をし、好きなものを買い・・・やがて美しい照明が灯り、
時間は流れていくのです。
音も時間を必要とします。音楽であれ自然音であれ、60分を超える音楽でも一瞬の音でも、時間がなくては成立しません。言い換えれば、
音は時間を表現するとも言えます。

 


音はメッセージ
「優れたデザインにはメッセージがある」と言います。メッセージはイメージあるいは感情と言い換えても良いでしょう。
イメージや感情は、その人の個性と文化から構成されます。文化は、背景にある地域・民族・時代・思想・技術・生活・環境などから生まれるものだそうです。
デザインされた音は、聞く人の心の中にイメージを育て吟味されることになります。

 


他のデザインと調和する音響システム
スピーカーとアンプ・プレーヤーなどには工業デザイン的に高く評価される物がたくさんあります。音質もさることながら、人々は製品のデザインにもこだわってきました。
しかし私たちは、あえて見せる音響システムは意図してきませんでした。インテリアやライティングなどでデザインされた空間に調和する音が目的ですから、基本的にスピーカーなどの音響システムは「見えない」あるいは、見えるとしても他のデザインとの調和を取るという考え方でオリジナルスピーカーの開発・製造や機種の選択しています。

 


コンテンツとシステムの調和がサウンドデザインを完成させる
どんなに綿密に考えてデザインしたサウンドコンテンツも、それを使用する空間の状況によって結果が大きく変わります。
とても うるさい 空間(環境)だったり、雨や風の影響を受ける空間だったり。特に個人で 音楽を聴く のと、ある空間の中で 音が聞こえてくる という状況では受け止め方が全く違います。
空間のサウンドデザインと、個人が楽しむ音楽や音は全く別次元のものだということを理解してください。
そのうえで、私たちは空間の条件( 建築音響的な条件、施設としての運用条件など )をひとつひとつ洗い出し、悪い条件はそれを補正し、
足りない条件はそれを補い、優れた条件はそれを活かしてサンドデザインを行いたいのです。
ですから、音響システムとコンテンツの両方からアプローチをすることが重要なのです。

 


マルチ再生システムについて
当社のサウンドデザインは立体音響表現だとご説明しましたが、その手法について少し。
建築空間であれ、あるいは屋外の施設であれ、劇場ホールやスタジオなどの音響とは条件が異なります。まずサラウンドやイマーシブサウンドなどのように、ある一定の条件でスピーカーを並べることが出来ません。床から同じ高さでスピーカーを設置することも、まして聴く人から同じ距離にスピーカーを置くことは不可能です。
聴く人は個人ではありません。多くの場合 不特定多数で空間の中を自由に動き回る人たちです。
ですから当社の立体音響表現は空間の中にリスニングポイントを求めません。あちこちにいる人がその場で気持ちよく、あるいはエキサイティングに音を体感していただくことを前提にしています。
具体的には、空間(建築)の条件で許される位置にスピーカーを複数設置し、その数6基・8基…24基…、それぞれから異なる音源を再生します。マルチ再生システムです。しかし異なる音源のすべてが空間で合わさるとあるハーモニーが出現するのです。少し大げさかもしれませんが、空間のあちこちにたたずむ演奏家が、それぞれの楽器を奏でて一つの音楽が成立するというイメージです。ヴァイオリン演奏者に近い位置の人とクラリネット演奏者に近い位置の人では聞こえる音楽の表情が異なります。それでも良いという考えで、誰も同じように聞こえるBGMとは趣が異なります。
これを実現するためには様々な技術的な手法を取りますが、必要不可欠なのが現場での音響調整です。実際にマルチに設置された各スピーカーから多種の音源を再生しながら、心地よい あるいはエキサイティングな音を体感できるように現場で音の調整(トラックダウン)を行うのです。この作業こそが、私たちが創るサウンドデザインの醍醐味と思っています。