TOKYO TORCH 常盤橋タワー「錦鯉が泳ぐ池」  東京都千代田区大手町二丁目
建築・事業主  三菱地所株式会社
設計・監理 株式会社三菱地所設計
施工   戸田建設株式会社
開業   2021年7月

 

東京駅前常盤橋プロジェクト TOKYO TORCH の常盤橋タワーが開業しました。
地上38階 約212mの超高層建築物 常盤橋タワーの前には約7000uもの広場「TOKYO TORCH Park」があり、
その一角には日本橋川を望む親水テラスと、「錦鯉が泳ぐ池」が 新潟県小千谷市との協業で作られました。
このエリアのサウンドデザインをニッポン放送とともに当社が担当しました。

 

テラスには樹齢を重ねたケヤキの大木が枝を伸ばし、50匹もの錦鯉が泳ぐ池とともに人々に寛ぎの場所を提供しています。
しかし、首都高速道路の騒音や常盤橋タワーの排気口からの音もあり、音環境としては決して良好ではありません。
そこで、テラスや池のほとりに配されたベンチ下に Pipe Speakerを設置し、暗騒音(都市騒音)をマスキングする効果を狙って制作した
オリジナル環境音楽を再生しています。
Pipe Speakerの伸びやかな低音域の音が暗騒音を覆うようにマスキングして、さらに立体的に聞こえるようにミキシングした弦楽器が
頭上を流れる心地よい空間サウンドが実現しました。

親水テラス

親水テラス

錦鯉の池

 

 

錦鯉が泳ぐ池と親水デッキの景観環境を守るため、スピーカー類は建築デザインに溶け込み目立たないよう設計しました。
4か所のPipe Speakerとポンプ施設の柵に設置した3基のTweeter Speakerで7chのマルチ再生となっています。
音響システムは屋外型の防水音響架に収められ、このエリアだけの独立したコントロールがなされていますが、
今後TOKYO TORCH建築の進捗状況にあわせて拡張や移転が可能なシステムです。

親水テラス

 

 

 

サウンドコンテンツによる暗騒音のマスキング
「錦鯉が泳ぐ池」と親水デッキはケヤキの大樹に囲まれ、寛ぎの場として多くの方に利用されています。
しかし、日本橋川の上には首都高速道路が通り、常盤橋タワーの排気口がデッキ側にあることもあって
暗騒音レベルは70dbと高くなっています。景観の潤いとは逆に、音環境としては決して良好とは言えません。

 

事業主であり広場の運営も進める三菱地所にとっても、このエリアの暗騒音を軽減することは大事な課題でした。
しかし、音響技術の手法だけで屋外の広範な空間の暗騒音を軽減することは、実際には不可能です。

 

そこで「寛ぎ」を感じていただける環境音楽で暗騒音による”うるささ“が軽減する・・・つまり音で音を制することとしました。
首都高速道路や排気口からの騒音は、ベンチに座る人やたたずむ人の頭上から覆われるように聞こえます。
そこで人に近い位置にPipe Speakerを設置して環境音楽を再生することで、人を囲い込む音のバリアーを形成しました。

 

PipeSpeaker(長さ8メートルの場合)は理論上15hzの音を再生できます。(ピアノの最低音 A0 27.5hz)
暗騒音の“うるささ”の要因である低い音が、環境音楽の低音域の音(ベース音)に置き換わり、気にならなくなる効果が
期待できます。通常であれば暗騒音にかき消されてしまう音階がきれいに再生されて、音楽が人の意識に溶け込むのです。

 

 

親水テラス
ケヤキ根元周 りにPS設置

親水テラス
ベンチ下にPS設置

 

もう一つのマスキング=サウンドコンテンツの音響調整
Pipe Speakerの特性を活かしたとしても、それだけで暗騒音をマスキングすることは出来ません。
再生する環境音楽を魅力ある音に表現する必要があります。
そのため現場で行う作業が音響調整です。

 

環境音楽はこの空間のために作曲したオリジナル作品です。暗騒音をマスキングするためにベース音を奏でるウッドベースやチェロといった
音色を使い、7か所のスピーカーからそれぞれの音源を再生することで(7chマルチ再生)音のバリアーとなる立体感がうまれるよう、
すべての作品を現場でトラックダウンしました。
暗騒音の中で.音楽を構成しているひとつひとつの音を拾い上げ、ある時は持ち上げ、ある時は音質を調整して創り上げます。
通常はスタジオで行われる作業ですが、実際の暗騒音の中で自分の聴覚で音響調整を行うことが、マスキングのためにも、作品の効果を発揮させるためにも必要なことです。

 

親水テラス
親水テラスでトラックダウン作業中 

 

 


親水テラスからの錦鯉の池

 

ダミーヘッドマイクロフォンで録音した常盤橋タワー親水テラスの音です 

 

 

 

オリジナルコンテンツ
大きく枝を伸ばすケヤキの大樹が、この空間の魅力を司っていると言っても過言ではありません。
三菱地所・ニッポン放送と協議を重ねながら、環境音楽のテーマをケヤキに絞り込みました。
芽吹き・新緑から夏の木漏れ日・落葉・冬の梢・・・一年を10のシーンで描き. 昼夜あわせて20のオリジナル環境音楽を作曲・制作しました
(作曲:前川眞人ミユージックファクトリィ)

 

小千谷の環境音とゆかりの音楽
小千谷市との協業で実現した「錦鯉が泳ぐ池」にはおよそ50匹の錦鯉が泳いでいます。錦鯉は雪深い暮らしから生まれ小千谷が発祥の地と
されています。その小千谷で受け継がれてきた音楽を、オリジナルコンテンツに組み込んでお聴きいただくことにしました。

 

8月末に行われる小千谷まつりや9月はじめに行われる片貝地区の奉納花火 さらには小正月の時期など、小千谷の営みを音で感じ取っていただけます。
演奏は「小千谷民謡 穂波会 会長:田中一男氏」「片貝伝統芸能保存会 会長:小林光男氏」の皆様です。